公益財団法人 山口県ひとづくり財団 県民学習部 環境学習推進センター
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環境学習講座「気候変動の影響が身近な樹木に忍び寄る」

地球温暖化の進行による身近な樹木の変化に“気づき”、“知る”ことで気候変動がもたらす影響について考える講座を、山口県気候変動適応センター専門研究員の元永直耕氏、惠本佑氏及び山口県樹木医会の中村裕三氏、草野隆司氏を講師に、萩市笠山で開催しました。

気候変動適応センターからは、気象観測や将来予測データを示しながら、極端な高温、海洋熱波、大雨の発生などの状況や「やまぐち気候変動適応情報プラットフォーム(YPLAT)」による気候システムの変化に関する情報を発信するとともに、「これって気候変動?みんなで調査!」に取り組み、県民からの気候変動に関する様々な“気づき”に関する情報を収集し、見える化して発信していることを詳しく紹介していただきました。

                     山口県の最高気温比較(講座資料)

                  やまぐち気候変動適応情報プラットホームから

                       これって気候変動?みんなで調査!から

中村樹木医からは、樹木医会と県が作成された「これって気候変動?みんなで調査!ガイドブック2024~やまぐちの樹木編~」を用いて、樹木の観察ポイントや近年の変化などを紹介されました。中でも、異常気象で弱った街路樹などに、特定外来生物のツヤハダゴマダラカミキリが産卵し、幼虫により枯損してしまう被害が顕在化していることを、害虫のサンプルを示しながら説明していただきました。

                            ツヤハダゴマダカミキリ(ガイドブックから)

草野樹木医からは、天然のクーラーといわれる風穴を有する笠山は、その特殊な環境下で、温帯と寒帯の植物が共存する貴重な植生が存在していることなどを詳しく紹介していただきました。具体的には、風穴からの冷気が漂う谷の底部には、北海道などにみられる「ホソイノデ」(寒地性のシダ)が自生し、谷の斜面上部には西日本の山中にみられる「カタイノデ」(暖地性のシダ)が自生している。さらに、斜面中部には、これらのシダの交配により、笠山にしか存在しない「カサヤマイノデやカタホソイノデ」が自生するなど、他では起こりえない特殊な植生があり、草野講師は、地球温暖化の進行により、こうした貴重な植生の変化が懸念されることと強調されました。(前日の悪天候の影響で風穴周辺での観察は断念した)

ホソイノデ
【北海道・中部山岳地帯に自生(寒地性)】

カタイノデ
【西日本の山中に自生(寒地性)】

カタホソイノデ(雑種)
【世界で笠山にしか自生しない】

午後からの観察会では、国内では笠山のみに自生するコウライタチバナ(萩市指定天然記念物)をはじめ笠山ならではの多様な植物を観察しました。また、ヤブツバキ群生林では、原生林状態であった森を、明治維新後に里山利用のため伐採サイクルを繰り返した結果、陽光による萌芽と落下した種子の発芽成長が重ねられ現在の自生密度の高い群生林が出来上がったことなど、椿群生林の変遷などを詳しく説明していただきました。

樹木の特徴を知り観察することは、気候変動に伴う変化の気づきにつながるとともに、自然をより身近に感じる充実した講座となりました。