未来につなぐSDGs講座 「親子で学ぶニホンアワサンゴの保護と環境」
世界最大級の広さの「ニホンアワサンゴ」の群生地といわれる周防大島町地家室において、長年、その保護や生態調査、様々な自然体験活動をされている、藤本正明氏(環境省委嘱自然公園指導員、山口県東部海域にエコツーリズムを推進する会会長)を講師に招き、親子でアワサンゴの生態や豊かな海を守るための取組について学ぶための学習会を実施しました。(受講者:22人(うち子ども11人)
1 講義:奇跡の海!周防大島のニホンアワサンゴ
学習会は、豊かな自然と景観から成る「海域公園地区」指定されている地家室に、令和6年1月に開所した「周防大島町地家室園地拠点施設」・「環境省地家室園地休憩所」で行いました。
藤本先生は、アワサンゴは「海の花束」と呼ばれており、珊瑚礁を作ることはなく、一つひとつの個体が海底の岩について群生し、一つの個体は丸い骨格とそこから伸びたポリプと触手から成ることやポリプや触手の中にはアワサンゴと共生する褐虫藻がおり、アワサンゴに栄養を与えていることなど、その生態についてわかりやすく話されました。
また、アワサンゴの群生は、背後の陸地にあるアベマキの大群落の腐葉土層に浸透した雨水が海底から湧き出すことで、海底の泥を押し流し、透明度をよくし、水温を一定にし、栄養塩を与えることにあると推測している。アワサンゴを守るためには陸地をきちんと整備することが大切であり、先生たちは「アベマキの森づくり」(アベマキの植樹、竹の伐採や炭づくり)や「水仙の里づくり」(耕作放棄地の整備)に取り組んでいることを話されました。
写真や動画、イラストを用いた説明や、施設内に設置されたアワサンゴの水槽展示の見学を通じて、子どもたちは楽しく学ぶことができました。
2 活動
午後からは、炭づくりの体験とアベマキの森の観察を予定していましたが、暑さのため炭づくりは「松ぼっくりの炭」を山口県東部海域にエコツーリズムを推進する会の方に作っていただきました。
炭ができる間、子どもたちはアベマキの森を散策しました。アベマキの落葉は1m程度に積もることや、木の種類、葉の特徴を聞いたり、途中で木の実を取って食べたりしながら、子どもたちは暑さに負けずに元気に歩き、山を守ることの大切さが、この海に群生するアワサンゴの保護につながっていることを実感しました。
観察後には、会の方が作られた「松ぼっくりの炭」が配られ、とてもきれいな出来栄えに、子どもたちはとてもうれしそうでした。
最後に藤本先生は、「皆さんが大人になった時に地球がどうなっているのか。「こんなはずではなかった…もっと対策をとっておけば…」と思わせたくない。そんなことも考えて、今の生活を送ってもらいたいと思います。」とのお話がありまりた。
子どもたちからは、「アワサンゴの生息には人の影響が大きいから人間が守っていくことが大切だとわかった」、「海を大切にしたい」、「アベマキの森のおかげでアワサンゴが奇跡の海を作った」、保護者からは「山と海のつながりを机上だけでなく、しっかりと見て触れて歩いて学ぶことができた」などの感想が寄せられ、先生の思いは受講者に十分伝わったのではないかと思います。