環境学習指導者養成セミナー
Ⅰ 環境学習指導者養成セミナー「水生生物による水質判定講座」
【開催日:令和7年5月15日(木)】
県内各地で開催される「水辺の教室」の指導者を養成する目的で、活動団体、教員、県・市町職員等を対象に「水生生物による水質判定講座」を開催しました。(参加者22人)
1 講義:水生生物による水質調査方法及び指標生物について
午前の講義では、人間環境大学総合環境学部フィールド自然学科講師の後藤益滋氏から、山口県の水環境の状況、調査場所の選定、水生昆虫の生態・指標生物・種類の見分け方をはじめ、地域や学校等で「水辺の教室」を開催する際の、子どもたちが取りがちな行動にどう対応するかなど、これから学習会を予定される指導者の皆さんの参考となる助言を受けました。
また、山口県は、一級河川と二級河川をあわせて110水系、483河川を有しており、「全国きっての河川王国」であり、河川を通じた水生生物の継続的な調査や自然体験活動に絶好なフィールドであることなど、多くの視点からの興味深い話がありました。
2 実習:水生生物による水質調査方法について
午後からは、後藤先生及び県環境保健センター環境科学部の職員の御協力をいただき、維新百年記念公園の木崎川で水生生物の採取、種類鑑別、水質判定の実習を行いました。
今年は、多種で、かつ、大きな水生生物が採取でき、各参加者は集中して採取・判別を行いました。なかでも、これまで木崎川での実習や調査では見たことがない「クロスジヘビトンボ」が採取されるなどの新たな発見もあり、後藤先生も驚かれていました。
採取した指標生物をシャーレに取り分け、その数を水質階級ごとに記録した結果、29種の指標生物のうち、「きれいな水 7種」「ややきれいな水 4種」「きたない水 0種」「とてもきたない水 2種」であり、最終的に「水質階級Ⅰ(きれいな水)」という結果でした。
「水辺の教室」は、水辺に親しんでもらいながら、これから成長していく子どもたちが自然環境の大切さを実感するとともに、自然の力やこわさも学習する大変有意義な学習会です。今後も、この講座の受講を通じて習得された技術や知識を生かしていただきながら、、「水辺の教室」の取組が広がっていくことにつながればと思っています。
Ⅱ 環境学習指導者養成セミナー「マイクロプラスチック調査指導者養成講座」
【開催日:令和7年5月20日(火)】
身近な海岸でマイクロプラスチックの調査・観察を行うことを通じて、プラスチックによる環境問題を知り、ごみの削減や資源としての活用などの大切さを考えるための指導者を養成する目的で、県内の環境団体、教員、県・市町職員等を対象に実施しました。(参加者14人)
1 講義:マイクロプラスチック調査について
午前中は、YMfg維新セミナーパークの研修室で、県環境保健センター環境科学部専門研究員の下尾和歌子氏から、マイクロプラスチックの定義やプラスチックごみのゆくえ、人や生物への影響になどの基礎知識のほか、三方が海に開かれた山口県における最新の海岸漂着ごみの調査結果と漂着ごみの特徴などを交えた説明を受けました。
また、指導者として必要な内容についても丁寧に説明され、これからマイクロプラスチック調査に取り組む参加者の皆様にとってとても参考となるものでした。
2 実習:マイクロプラスチックの採取
午後からは、美濃ヶ浜海浜広場(山口市秋穂二島)で、3~4人の4グループに分かれ、県環境保健センター環境科学部の職員の助言を受けながら、砂の採取場所の選定・採取、砂のふるい分け・比重分離・選別・観察という調査の手順で実習しました。
参加者の皆さんは目視ではなかなか判別が困難なものは、ルーペやピンセットを使いながら、細かなプラスチック片を種類別にシャーレに移し、その数を集計表に記録しました。一連の作業に集中して取り組む中で、海岸の砂にミリ単位の小さなプラスチックが混じっていることの怖さや、プラスチックごみ問題の深刻さについて改めて考えることができました。
また、環境保健センターの職員があらかじめ採取していた日本海側の砂を試料として提供していただき、この砂を用いたマイクロプラスチックの選別を行いました。レジンペレットが多数確認されるなど、異なる海岸でのマイクロプラスチックの特徴を知ることができ、大変有意義な実習となりました。
今、世界では毎年800万トンものプラスチックごみが海に流出しているといわれ、最近のニュースでは「マイクロプラスチックが世界中の海のあらゆる深さに分布しており、海が巨大なプラスチックの貯蔵庫になっていることが明らかになった。」と報道されるなど、プラスチックによる環境問題が深刻化しています。
この研修会で習得された知識が学習会で生かされるとともに、各地で開催されることを通じて、プラスチックによる環境問題を知り、ごみの削減や資源としての活用の大切さについて考え、実践につながればと思います。